犬や猫の尿管閉塞は急性腎後性腎障害(AKI)へ進行する可能性があり、早期の外科的な介入が推奨されている。 従来の術式として尿管切開術や膀胱尿管新吻合などが挙げられるが、腎結石が残存する場合は再閉塞する可能性が高いと報告されている。 近年、尿管ステントやSUB systemなどのデバイスを設置する治療も実施されているが、感染やデバイスの閉塞などの合併症も報告されている。 本報告では尿管切開による閉塞性尿管結石の摘出に加え、腎盂内に硬性内視鏡を挿入して、再閉塞の懸念のある腎結石を同時に摘出した犬の1例を報告する。
症例はヨークシャー・テリア、12歳齢、去勢雄、体重1.8kg。
食欲不振および頻尿、発熱を主訴に近医を受診、尿路結石と診断され当院を紹介受診した。
X線検査、超音波検査にて左右の腎結石、左尿管結石および左の水腎症、多数の膀胱結石を認めた。
尿検査では細菌および炎症所見を伴い、腎盂腎炎・細菌性膀胱炎と結石による左尿管閉塞と診断した。
穿刺尿を用いた薬剤感受性試験に基づき、抗菌薬を含む内科療法を実施し、一般状態は安定したものの左尿管の閉塞は解除されず、外科的に結石を摘出した。
症例は麻酔導入後に仰臥位で固定。
尿道カテーテルを設置後、定法通り腹部正中切開を実施。
左腎を露出させ、腎盂に18G留置針を挿入、続いてダイレータを用いて穿刺創を拡張して3mmポートを設置、硬性内視鏡の腎盂内へのアクセスを可能にした。
その後、左尿管にアプローチし、尿管切開により結石を摘出した。尿管の切開部から逆行性に3Frアトムチューブを挿入し、鏡視下で観察しながら生理食塩水による腎盂内の洗浄を行なった。
小さな結石は洗浄によりポートから排出された。大きな結石は鏡視下でバスケット鉗子を用いて摘出した。
腎盂内に明らかな結石が認められないことを確認してポートを抜去し、腎臓の創部を5-0PDSで単純結節縫合した。
続いて膀胱にも3mmポートを設置し、尿道カテーテルからの生理食塩水の洗浄により、小さな結石を排出させた。
膀胱の切開創を4-0PDSで単純結節縫合後、尿管切開部に挿入したアトムチューブからの造影で遠位尿管への疎通性を確認し、尿管切開部を7-0ネスピレンで単純結節縫合した。
腹腔内を生理食塩水で洗浄後、定法通り閉腹し、手術を終了とした。術後に誤嚥性肺炎を併発したが、内科治療により良化し術後5日目に退院している。
術後59日目の時点で腎数値の悪化は認められず、左腎に明らかな結石は認められていない。
本症例では、腎結石を同時に摘出することで術後早期の尿管の再閉塞を回避し、良好な経過が得られた。
治療方針としては、尿管ステントやSUB systemの設置も検討されたが、細菌尿の存在からデバイス関連合併症のリスクを考慮し、これらの設置は行わず本術式を選択した。
一般に、尿管切開術のみを実施した場合、残存する腎結石が術後早期に尿管縫合部へ移動し、再閉塞を引き起こす可能性があり、再手術が必要となるリスクがある。
そのため、再閉塞の原因となり得る腎結石を同時に摘出することは、臨床的意義が大きいと考えられる。
本術式では、ポート設置による腎臓への物理的侵襲が懸念されるものの、従来の腎盂切開と比較して侵襲の小さな方法で腎結石の摘出が可能であった。
一方で、本術式の実施には尿管径や腎盂の拡張など一定の条件が必要であり、症例選択には十分な注意が求められる。
今後はさらなる症例の蓄積を通じて、本術式の適応について検討していく必要がある。
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