犬の下部尿路結石症は一般的な疾患であり、特に尿道の完全閉塞を伴う症例では腎後性急性腎障害などの重篤な状態に至る可能性がある。 治療としてはカテーテルによる膀胱内への結石の押し戻しと膀胱切開術が一般的である。 しかし結石が強固に嵌頓している場合、カテーテルの挿入が困難であり膀胱内の結石の回収ができず会陰尿道造瘻術や尿道切開といった侵襲的手術が必要となることがある。 これらの術式は尿道狭窄や感染、再閉塞などの合併症を伴う可能性がある。また、膀胱切開をする場合も結石の取り残しなどの術後合併症が報告されている。 近年、低侵襲治療としてHo:YAGレーザーを用いた経尿道的結石破砕術(transurethral lithotripsy:TUL)や経皮的膀胱結石摘出術(Percutaneous cystolithotomy :PCCL)などの内視鏡を用いた術式が報告されている。 今回、閉塞性尿道結石を呈した犬2例に対しTULおよびPCCLを実施したためその概要を報告する。
5歳2か月齢、避妊雌、雑種、体重3.42 kg。
他院にて開腹下での膀胱結石摘出術中に結石が尿道内へ移動して、軟性内視鏡を挿入するも回収できず、完全閉塞性の尿道結石を呈したため当院を受診した。
X線検査および超音波検査にて尿道内に結石(4.4×6.3 mm)を認め、膀胱および尿道近位は顕著に拡張していた。
9.5Fr 硬性膀胱鏡を用いて結石を膀胱内に押し戻し、Ho:YAGレーザー(Sphinx Jr)によりレーザー結石破砕を膀胱内で実施した。
細かい結石片はバスケットで回収した。手術時間は25分、周術期合併症はなく、状態が安定していたため当日に退院した。経過は良好で排尿困難はすぐに改善された。
11歳2か月齢、去勢雄、ミニチュア・シュナウザー、体重11.22 kg。
排尿困難を認めたため近医を受診、閉塞性尿道結石を認めるも膀胱内に押し戻すことができず当院を紹介受診した。
X線検査および超音波検査にて遠位に尿道結石(5.3×10.9 mm)1個と小結石を多数認めた。
カテーテルによる結石の押し戻しは困難であったため、7.5Fr軟性尿管鏡とHo:YAGレーザーを用いて尿道内の結石をレーザー結石破砕し、膀胱内に移動させたのちにPCCLを実施した。
手術時間は96分、状態が安定していたため当日に退院した。
術後33日目のX線検査で結石は認めず、経過は良好であった。
尿道閉塞は尿の排出障害により急性腎障害や高カリウム血症を引き起こし、迅速な解除が求められる。
今回、雌では硬性膀胱鏡を用いた経尿道的レーザー結石破砕により、膀胱切開を行うことなく尿道および膀胱内結石の除去が可能であった。
雄では軟性尿管鏡による尿道内結石のレーザー破砕後、PCCLを併用することで確実な結石除去が可能であった。
いずれの症例も術後速やかに排尿状態は改善し、重篤な合併症は認められなかった。
以上より、閉塞性尿道結石に対するTULおよびPCCLは、低侵襲かつ有効な治療選択肢となる可能性が示唆された。
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