特発性炎症性腸疾患(IBD)

特発性炎症性腸疾患(IBD)

特発性炎症性腸疾患(IBD)とは自己免疫性疾患の1つで、長期間(数ヶ月以上)続く下痢や嘔吐などの症状が出ます。自己免疫性疾患とは、自分の細胞(自己)を自分とは異なるもの(非自己)と認識してしまい、攻撃してしまう病気です。

この病気は抗生剤の投与や食事療法などの下痢や嘔吐に対する一般的な治療を行っても反応が認められません。診断するためには全身麻酔をかけて内視鏡検査を行い、消化管(胃や腸)の一部を採取して病理組織学的検査を行わなければならない非常に難しい病気です。病理組織学的検査を行うことによって、腫瘍との鑑別をすることも可能です。
下の画像は実際に内視鏡検査を行った症例の写真です。

特発性炎症性腸疾患(IBD)

青矢印で示すような白い斑点が多数認められます。
この症例の腸の一部を採取し、病理組織学的検査を行ったのが下の写真です。

病理組織学的検査

腫瘍細胞は認められず、リンパ球や形質細胞という炎症細胞達が多数認められます。この検査結果から初めて特発性炎症性腸疾患(IBD)と診断することが出来るのです。

青矢印で示しているのはリンパ管が拡張しているリンパ管拡張症という病気の所見です。リンパ管というのは全身に巡っている管で色々な働きをしてくれています。その働きの1つに脂質を運んでくれるというものがあります。
そのため、リンパ管が拡張すると先ほど紹介した内視鏡検査の写真のように白い斑点が多数認められるようになります。

リンパ管拡張症は特発性炎症性腸疾患(IBD)と併発する(同時に起こる)ことが多い病気で、この病気も病理組織学的検査を行わないと診断することが出来ません。このリンパ管拡張症を併発していた場合には特発性炎症性腸疾患(IBD)の治療だけでは治らない症例もいます。
正しい診断を行わないと正しい治療をすることは出来ません。下痢や嘔吐という非常に多い症状でも甘くみないで、なかなか治らない時にはしっかりと検査を行い、正しい治療につなげていきましょう。

症例

M.ダックス 9歳4ヶ月 男の子

最近やや軟便気味というダックスさんです。
血液検査を行ったところアルブミンというタンパク質の数値が低くなっていたため、超音波の検査を行ったところ消化管にリンパ管拡張所見が認められました。
そこで、IBDとリンパ管拡張症を疑い内視鏡検査を実施したところ、

症例

上の写真のように重度のリンパ管拡張が認められました。また、病理組織学検査でリンパ管拡張を伴うIBDと診断されました。
現在はIBDの治療を行い元気に生活しています。

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