副腎摘出術
副腎摘出術
副腎摘出術は良性の副腎腫瘍や内科管理に反応しない副腎疾患において適応となります。
副腎は摘出前に良性・悪性の診断をつけることが難しく、手術の手技も難しいです。
合併症も多く、術前計画をきちんとたてる必要があります。
NEW<症例> クッシング症候群を伴う、副腎皮質癌のワンコ
他院にて肝酵素が高く下がらないということで紹介来院され、検査の結果、副腎腫瘍を見つけたため手術を行いました。
クッシング症候群を併発していたため、小さな傷で出来る腹腔鏡手術を選択しました。
まずは腎臓、副腎と腹壁がくっついているところをはがしていきます。
脂肪の中に血管が隠れているのでそれを出血させないように丁寧にはがしていきます。
血管は電気メスや超音波メスを使って止血していきます。
腎臓と副腎の間を剥離していきます。 ここでも腫瘍の周りには豊富に血管があるので丁寧に剥離していきます。
副腎の周りを完全に剥離したら超音波メスで離断していきます。
離断した副腎をバッグに入れて外へ出します。
出血もほとんどなくとても綺麗に摘出することが出来ました。
今回の手術時間は短く約45分でした。
病理検査の結果、副腎皮質癌という悪性腫瘍でした。
とても元気すぎてすぐに退院していきました。
副腎皮質ホルモンの影響のためお腹が大きくなって脂肪がたくさんついていました。
開腹手術だと脂肪で大変なのですが、副腎を用いた腹腔鏡手術はうまくいけばほとんど出血はありません。
リスクも高い手術ですができれば低侵襲でやりたい病気です。
開腹手術にコンバートすることもありますがその際も傷は小さくなりますので、手術に迷っている方は来院してください。
重本
<症例> マルチーズ 8歳 女の子
定期検診の時に、右側副腎の腫大を見つけました。
実際の手術風景です。
↑実際に取り出した右副腎 (1.7×1.8cm)
副腎はお腹の奥の方、腎臓の近くにあるため開腹手術ではお腹を大きく開けなければいけません。
しかし、腹腔鏡を使うと・・・
1cm程度の傷口が4つという非常に小さな傷口で摘出できました!!
また、副腎は後大静脈という重要な血管のそばに位置するため大きな出血が起こることもあり、非常に難易度の高い手術になります。
しかし、腹腔鏡の手術では一つ一つの血管をカメラで確認しながら処理できるので出血も少なく、開腹手術に比べてワンちゃんの負担を大きく減らすことが出来ます!!
この子も術後はすぐに立ち上がり、翌日には散歩に行けるくらい元気になりました。
<症例> 雑種 6歳6ヶ月 男の子
他の病院にて左副腎の腫大を認め、腹腔鏡下での手術をご希望し当院にいらっしゃいました。
副腎の腫瘍は他の腫瘍に比べて珍しいので、腹腔鏡で手術をした報告は大変少ないです。
手術の難易度、術中の出血、周囲組織への腫瘍浸潤の程度、そして術後合併症のリスクなど様々な事を考える必要があり、腹腔鏡で実施をする判断はすごく難しいですが、十分に話し合った結果、腹腔鏡にて実施する事となりました。
副腎は無事に摘出することができました。
術後の傷口もこんなに小さく、術後4時間ではごはんも食べられる程の調子の良さです。
腹腔鏡の手術がいかに低侵襲か実感させられました。
今もとっても元気に過ごしています。
動画
犬の腹腔鏡下副腎摘出術(右) 王子ペットクリニック 重本
犬の右副腎2.5cm。腹腔鏡下手術。3ポートで摘出が可能。
CLARA&CROMAという新しいモードで手術している。
これは暗いところ明るくし、CROMAは赤を強くしコントラストをつけることにより血管一本までしっかりと確認することができる。
少しギラギラするが、手術しやすくなる。